岩佐えり子 写真 〜独  り  言 〜            岩佐 えり子

●長く落ち着かない御天気もやっと本来のペースを取り戻してきているようですね。

 さて上半期の皆様の音楽ライフは如何でしょうか?
 私は相変わらず、感動を求めて色々なコンサートに出かけてきました。
 年明け、ベルリンからの弦楽四重奏団のコンサート。<  日本では「ベルリン」やら「ウィーン」と付けばチケットが売れる!などと実しやかに囁かれたりしましたが、出かけて聴いた演奏は、最初から本当に程好い抜け感(いい意味でのリラックス感)があり、とても心地良くその音の世界に招き入れていただきました。
 ただただリラックスしているのでは無く、決め所での一体感、メンバー皆が音楽を楽しみ、慈しみ、畏敬の念があったり、深く共鳴したりと様々な心模様も乗せて流れ出る音の波に時間を忘れてしまいました。
 以前に聴いた他のコンサートでは、あまりにその超絶技巧が鋭敏に研ぎ澄まされて揃っている為になんだか特攻隊の一糸乱れぬ飛行を思い浮かべてしまい、心落ち着かなくなった経験があります。
 技巧的にはもの凄いレヴェルにあり、表現の一つなのでしょうが、私個人的にはどこか良い「遊び」がある演奏の方が好きなのだわと思ってしまいます。
 また別にヴァイオリンとピアノのデュオも聴きましたが、これまた私の好みとは違う 表現。しかしこれがまたいい意味で彼らの世界に引き込んでくれました。ピアノとヴァイオリンのまさしく共演で、そのやり取りの妙味を遺憾なく発揮してくれ、最後にはヴラボーが飛び出していました。
 人の好みを超えて自分の世界に引き入れてしまう、これがやはり演奏者として必要な所謂「個性」なのかもしれません。
 そして思い出したのが、「どうもこんな表現は好きではない!」と思いつつ忘れられない演奏を展開してくれたピアニストでした。あまりにその範疇を超えると「鬼才」と呼ばれたりしますね。
 また私たちが生きている今だからこそ新しい曲の演奏をしていくべき、と現代音楽のお披露目をしておられる演奏家もいらっしゃいます。  その方は、「赤ん坊がこの世に産まれてきたら目にする物、耳にする物、全てが初めてで興味をそそる物のはず、その様な若い耳でこれから演奏する曲も聴いていただきたい」、とわざわざ日本語に訳させてステージ上で話されていました。
 本当に色々なジャンルで日々進化を続けている演奏家はたくさんいらっしゃいますね。
 先日新聞で「80歳にもなってきますとやっと少し音楽を判ってきたようです」というようにおっしゃっているピアニストの事が掲載されていました。
 これほど謙虚に真摯に生きていければ素敵ですね。
 また新たな刺激、発見、感動を求めてコンサート会場に向かいたく思うこの頃です。


●去年も色々なコンサートを味わうことができました。
 特にハープのグザヴィエ・ドゥ・メストレはウィーンフィルのソロハーピストでハンサム!
 ハンサムという事だけではなくTV放映での演奏に興味があり、早速ソロコンサートに出かけてきました。

 期待を裏切らない様々な音色に技巧、表現と、音がまさしく泡立つシャンペンの如くホールに湧き上がっていきました。それは決して甘い表現ばかりではなく、激しく厳しく掴み取られたような表現から、遠くでの清らかな漣のような流れ、まさしく変幻自在でした!
 そして感じたのはピアノという楽器はいい意味でも悪い意味でも本当に均等な楽器だという事でした。
 弦楽器では開放弦での音、ポジショニング位置の変化での音、それぞれで響きや音色が変わるのが、ピアノではあまりに均等な為、細やかな一音一音での変化に意識が薄れ易いのではないかと思ったのです。
 同じドミソの音型の連続でもどんどんニュアンスが変わっていく様に、思わずピアノ奏者は無意識のうちに均等に揃えて、音が抜けないようになどとばかりに気を囚われてしまっている人が多いのでは?と思いました。
 もちろん音が抜けたり、不揃いではだめなのですがそれ以上にもっと音の色付けを考えなければ、この場面ではどんな楽器が出している音だろう?どのようなニュアンスかしら?と考えてはいても均一にされている楽器ではその変化は人には判りにくいという事を良く踏まえて、表現していく努力をしなければいけないと改めて感じました。

 今年もまた色々な音楽に触れて心の栄養をたっぷりと吸収できるように、色々な楽器の音にも触れられるようにコンサートに出向ければと思います。


●今年の年明け、私は母のお供でウィーンに出かけてきました。

 今回は母が所属する合唱団が、なんとあのウィーンが世界に誇る楽友協会(ムジーク・フェライン)の大ホールにてコンサートをする!ということになったのです!!
  毎年ニューイヤーコンサートが華やかに開催されているあのホールです。今年のお正月はウィーンフィルにバレンボイムの指揮で会場も豪華な花で飾られていましたね。
 日本のある旅行社がウィーン在住の日本オーストリア協会の方との企画で、日本からの合唱団をこのホールでコンサートをさせるというもので、もう10年ほどになるそうでした。

 今回は東京の指揮者の先生が招待され、この先生が指導されている合唱団が東京、名古屋、大阪から終結して(160名ほど)出かけていきました。
 ソリストやオーケストラは現地の方達に協力頂き、到着した翌日の朝からリハーサル。
 朝だから声が出ないなどとは言っておられず、翌日には本番です。
 指揮者の先生とは10年来練習をしてきているメンバーもいらっしゃれば私のように半ば無理やり!?参加させられた新参者まで、オケもソロの方達とも最初の合わせでいい緊張感が漲っていました。
 正直どこまでできるのか?との疑問を持ちつつ、しかし的確な指揮者の先生の指導にどんどん引き込まれていきました。流石です。
 そして当日。雪がちらつくお天気に、舞台に立つ人数の方が多いのでは?という不安はチケット完売というお話で少し薄れました。
 そしていよいよ本番。客席からは何度も見た素敵なホールの今日はなんと舞台側にいるのですからなんとも不思議です。
 ヘンデルのメサイアは休憩を入れて3時間はかかる大曲。色々な意味でどうなるかという期待を胸に歌い進みました。
 休憩前の最後のハレルヤが歌い終わるや観客席からの大きな拍手になんとも言えない充実感を感じました。
 本当にたくさんの方が来て下さり、一生懸命に聴いて下さっているのが手に取るようにわかります。
  こういう聴衆が芸術を支えているのだな〜と改めて思いました。

 最後まで合唱団も歌いきり、オケやソリストが舞台から捌けて最後に合唱団が戻るまで、多くの聴衆の方達が拍手で見送って下さいました。
 コンサート後もわざわざ手を掴んで「あなた達の合唱が特に素晴らしかった」と声をかけてきて下さる方も多くあり、アマチュアでも多くの力でこんな事ができてしまうのか、と思いました。